今日は専門的なお話。是非、建築関係者にも読んでもらいたいです。

ホールダウン金物とは直下型地震時など、土台から柱が引っこ抜けないようにするための金物です。

丸庄建設は普通の木造在来工法ではなくドリフトピンを使った金物工法ですが、ホールダウン金物は通常の在来工法と同じく設置します。

通常は16mmのボルトを基礎に埋め込んで、ボルトとホールダウン金物と緊結しますが、後付けできるビス止めタイプのものも存在します。


耐震等級3とそうでない建物ではこのホールダウン金物の数が全く違います。計算の仕方にもよって変わってくるので一概には言えませんが、大体3倍くらい違います。

私も、あまりの多さに後付けのホールダウンや、金物工法の接合部を強化する方法で、基礎にボルトを埋めない方法で検討したのですが、構造計算がOKになりません。

柱の引抜きに対しては後付けのものでも問題はないのですが、16mmのボルトを基礎に埋め込んで柱で土台を押さえつけるようにしないと、地震時に柱が浮こうとした力でその柱付近の土台が折れてしまう、という結果になります。

そんな事起こるの?と思われるかもしれませんが、ホールダウン金物は10~30KN用というものが良く使われており、これは柱1本あたり、3000キロの力で引き抜かれる事を意味しています。


計算をするまではそんなことも気にしたことはなかったのですが、実際の計算では10KNあたり以上は16mmのアンカーと緊結して、土台を一緒に押さえつける必要があります。

各金物メーカーからビス止めタイプのものが発売されており、付け忘れや位置のずれ等でつけられなかった時に簡単に対応できますが、実はそれでは引抜に対しては有効でも、土台のせん断に対しては効果がないので、結局土台ごと折れて崩壊してしまいます。


建築基準法で10KNからが16mmアンカーとホールダウン金物になっているのは、おそらくはそういった理由からだと思います。

ビス止めホールダウンを発売しているメーカーに責任があるわけではなく、選定する設計者の責任です。

特に現場監督が16mmのアンカーを入れ忘れたからビス止めに変えたり、なんてことは絶対にあってはいけません。

しかし、現在の家づくりおいて、そういった変更は日常茶飯事ですし、そもそも土台が折れる事を気にしている人なんて、100人の現場監督・設計者がいてそのうち1人でも理解しているかどうか、それくらいのレベルの話です。


そういう私も構造計算するまでは知りませんでした。

構造計算すると、法律で定められている数値や仕様がなぜそうなっているのかの背景が見えてきます。

勝手に変更する事と、理解して変更する事は全く違う事なので、細かい事ですが気を付けていきたいなと思います。

ただシンプルに、基準を守る。

今の世の中の家づくりではそれができていないのかなと思いました。