UA値0.4W/㎡Kの断熱性能でも快適に暮らす人もいれば、少し寒い暑いと感じる人も様々です。今では当たり前になりつつある断熱等級6,7ですが、断熱性能だけを考えると快適には暮らせません。
4人家族、在宅あり、子供は小中学生くらい、第一種換気、エアコンは冷暖房とも25℃設定、6畳用エアコン1台のみ常時稼働、窓(サッシ)は一切開けない。
設計プランUA値0.4(弊社基準値)、比較プランUA値0.26(断熱等級7)でミュレーションしてみます。
下の画像は年間の温度変化をシミュレーションしてみたものです。間取りに表示されている各部屋の温度は最寒日12/21、朝5時の各部屋の温度です。左が設計プランUA値0.4、右が比較プランUA値0.26。1階と2階それぞれの画像です。
1階↓
2階↓
間取り図に各部屋の温度があります。仮にドアを全て開けた状態であればどの部屋も25℃になりますが、個室やトイレ、お風呂など締めておきたい部屋があればこの間取りのように温度ムラはできてしまします。(弊社の建物で浴室温度が15度になっている方はいませんが、あくまでもずっと締め切っていたらというシミュレーションなので・・。実際には温度ムラはほとんどありません。)
温度ムラを解消するためにドアを開ければプライバシーがなくなり、視線や音が行き来します。それはそれで快適とは言えませんよね。快適の要素は温熱だけではなく、音、臭い、温湿度、距離感など様々な要因で快適と判断します。
全館空調の他、小屋裏エアコン・床下エアコンなど色々な機械や仕組みがありますが、なるべく複雑な仕組みや機械に頼らずに快適にしていきたいと考えています。
そのためにも、機械にお金をかけるのはなく、断熱性能を高めるためにお金を使っていただきたいと思います。
話が変わりますが、先進国のドイツでは今、自由に家が建てられないそうです。
性能が良い家は新築時の最低条件で、太陽光発電の他、50m地下まで配管を打って地熱利用する事や、太陽熱利用温水器設置など、自然エネルギーを利用して電気をなるべく使わない家(消費電力を実質プラマイゼロにする家)でないと建てられない地域があって年間の新築上限も決められている。そして新築の家は5000万円~と驚きの価格。
日本のように建てたい人が自由に家が建てる事ができないそうです。
それだけ環境について国民の理解・協力があってこそ、環境先進国と言われているのですね。これを聞いて日本のUA値0.4の家で建築費3000万円、消費電力も気にせず使って快適に暮らすことができる、ドイツに比べたら得と安易に考えてしまうには、少し違和感を感じるものです。そもそもドイツと日本では考えていることが違いすぎて、比べてはいけないのですが。
ドイツは温熱環境のさらに先のステージにいるので、いかに電気を使わない家かが大切なのです。
そして今ドイツで主流になっている断熱材、それは木質系断熱材です。断熱性能はグラスウールや発泡系に比べ低いです。ではなぜ木質系なのか?
日本ではUA値がどうかばかり気にしがちですが、先日のブログでも書いたように、UA値だけが断熱の全てではありません。
それは熱容量と言う考え方。
左から発砲系断熱材、木質系断熱材、繊維系断熱材。これにライトを当てて断熱材の中の温度変化を見てみよう、という実験です。
温度計の上が室温、下が各断熱材の中心に仕込まれたセンサーの温度です。
少し下の動画を見てください。真ん中の木質系断熱材の中の温度変化がとても緩やかで、ほとんど温度も上がっていません。
熱容量とは、つまり熱の伝わるスピードと思ってもらって良いです。熱容量が大きい断熱材は外気の温度変化の影響を室内に伝えるまでに時間がかかります。
それはつまり室内が外気環境に左右されにくいという事。
木質系断熱材は熱伝導率0.04W/(m・K)とそこまでよくない(フェノバ系では0.019W/(m・K)とか)けど、熱の伝えるスピードはグラスウールの約28.9倍遅いのがメリット。
例えば、夏場の日中に35℃超えても夜に28℃まで下がれば断熱材自体が35℃に到達しないイメージ。他の断熱だと先ほどの動画の温度上昇のようにあっという間に外気温と同じまで到達してしまいます。エアコン負荷って、外から攻めてくる外気温とエアコンの熱のせめぎ合いなんですよね。だから断熱材が外気温に近づけばエアコン負荷も増えるし、体感温度も変わってくる。
ドイツでは新築住宅のほとんどが木質系断熱材だそう。家の性能は熱容量で考えます。UA値を良くするとか今まで色々な事をやってきたドイツがたどり着いた住宅断熱材の終着点が木質系断熱材です。
そしてもう一つ快適性を考える上で大切な事、それは音。木質系断熱材は遮音性に優れており、外の車の音や生活音をほとんど感じないくらい遮音性に優れています。これは弊社でグラスウール断熱を使う場合に少し気にはなっているのですが、グラスウールでは車の音などを完全には遮れません。家で寒い暑いなどに気を取られていれば音まで気にはならないでしょうが、温熱環境が整ってくると、少しの音までも気になってくるものです。
UA値も大事。だけどそれだけじゃない。価値観は人それぞれだけど同じ人間。快適と思う心地よさは断熱性だけでは決まらないでしょ?だからこそ断熱性のその先の快適性を追求したく、悩んできたけど、スタッフや取引業者のおかげでようやく少しずつ具現化されてきました。
今までも何十年後に日本でも浸透するドイツの考え。ドイツのように、とまでは今はできないけど、先取りして、丸庄建設の家が何十年後でも最先端の住宅であってほしいと願いを込めて、木質系断熱材のご提案もしていきたいと思います。それとまた違った断熱で、塗り壁と付加断熱が一体になったStoもめちゃくちゃ良いです。次自分の家をまた建てるならStoも使いたいですね。
さて、次はデザイン・見た目に関して書いていきたいと思います。