丸庄建設にお問い合わせ頂くほとんどのお客様は耐震性に非常に興味を持っていらっしゃいます。お打合せの際には耐震等級3を取得していることを伝えさせていただいておりますが、「他の工務店でも耐震等級3“相当”といってましたよ」と皆さん口をそろえて言われます。

この“相当”というのは耐震等級3とは全く違いますので、本当に惑わされないように気を付けなければなりません。
何を根拠にそう言っているのかで大きく違いますが、おそらく私が思うに、建築基準法で定められた耐力壁量のみ1.5倍はクリアしていますよ~って事が耐震3“相当”なのではないかと思っています。


殆どの住宅は計算書すらない

通常の住宅であれば、壁の量や柱の引抜金物や偏芯率などをクリアしていれば家は建ちます。しかし確認申請には計算書は必要なく、あくまでも設計士の判断で確認申請の審査項目には含まれません。
ですので引き渡し時に確認申請や検査済証をもらっても家のどこに耐力壁があるのかさえ分かりません。平面詳細図やプレカット図に記載があるだけで、壁量計算書は、データはあるけどお客様の手に渡らない、なんてこともあります。

もっといい加減なところでは、設計士が耐力壁の配置や計算をしていない所もあります。プレカット工場の入力者がこれを行っています。住宅業界の闇ですね。。


構造計算しますから大丈夫ですよ、は嘘

他の工務店やハウスメーカーで「構造計算しますから大丈夫ですよ」と説明された事はありませんか?「ちゃんとしているんだ」と安心したのではないでしょうか?
しかし、木造住宅において法律で定められた構造計算は「許容応力度計算」のみ。それ以外の「計算」は「構造計算」ではありません。
ハウスメーカーや工務店の営業マンは、壁量計算、n値計算、そういったものも「構造計算」という認識でいることもあります。n値計算などを構造計算だと信じて構造計算をしているとお客様に説明していることもあるのです。
住宅業界の闇は深まるばかりですね。。。


耐震等級2の方がマシという事実

上記のような設計士だけの判断で誰にもチェックしてもらっていない状態で、壁量を1.5倍にしたのが巷で言われている耐震等級3相当です。

そもそも耐震等級1で

“数百年に一度発生する地震の地震力に対して倒壊、崩壊せず、数十年に一度発生する地震の地震力に対して損傷しない程度。(建築基準法同等)”

です。
数百年に一度発生する地震は「阪神淡路大震災」熊本地震」などと思ってください。


耐震等級3“相当”は耐震等級2よりも弱い可能性もあります。なぜなら、耐震等級2でも梁や柱の接合部や、床や屋根といった水平構面の強さ、基礎の鉄筋の量はしっかりと計算して申請機関にチェックしてもらわないと耐震等級2は取得できないからです。こういった検討項目は“相当”なんて言っている工務店では一切考慮されていませんので、強度的にはかなり弱いと思われます。

家の強さは壁の量だけではないという事です。


耐震等級1以下は大地震がきたら住み続けられない

耐震等級1が「数百年に一度発生する地震の地震力に対して倒壊、崩壊せず」と言う事はお分りいただけたと思います。具体的にイメージできますか?
倒壊はしないけど、損傷はする。つまり、かなりのダメージを受けてそのまま住み続けられる状態ではなくなると言う事。

1年前に建てた家が、昨日引き渡しが終ったばかりでも、震度7クラスの地震があればもうこの先住めなくなる、そんな悲しい事が起こりうると言う事。

大地震に対して1度だけ住む人の命を守ってくれるのが耐震等級1以下の建物。

勿論、耐震等級3“相当”も震度7の地震から1度しか命を守ってくれませんし、その先は住めなくなると言う事です。


耐震等級3の必要性

ここまで読んでいただいた人は耐震等級3は必要だと思っていらっしゃるはずです。

では耐震等級3なら震度7の地震でどうなるのか?と言う事が気になりますね。耐震等級3の家は繰り返す震度7以上の揺れにも大きな「損傷」が起きにくい事も熊本地震で証明されました。最近の建物でも耐震等級1以下の建物は倒壊してしまうものも多かったようですが、耐震等級3の建物は現在も住み続けられます。

耐震等級3「相当」は本当に危険です。

命と財産と将来の生活を守る家=耐震等級3


耐震性と気密性の深い関係

最近では家の断熱性や気密性にもこだわりを持った工務店も増えてきましたが、耐震性にこだわった工務店はまだまだ少ないです。しかし、高気密高断熱だけこだわっても地震が来たらその気密性はすぐに失われます。

耐震性が低い家では揺れる幅も大きくなり、吹き付けの断熱材や気密処理した部分なども損傷を受けて隙間だらけになります。これは震度5、6あたりの地震でもそうなる可能性が高いのです。地震が来ると目に見える部分ではクロスや外壁にヒビが入る事がありますが、壁の内部も同じ状態です。

寒冷地にも匹敵する気密性や断熱性を謳っている工務店は多いですが、もしその工務店が耐震等級3「相当」の家づくりをしているなら、耐震性に関してかなり知識が足りていませんので、本当に危険です。


計算方法も仕様も色々。

同じ耐震等級3でも構造計算がなくても取得できるパターンがあり、「性能表示計算」と言われるもので「スパン表」と呼ばれるものなどを使用するものです。これはダメではないのですが、適用できる建物形状に条件があり、さらにはおおよそどんな建物にも適用できるように少し過剰目に設定されているので、基礎の鉄筋量も増えがちです。その分丈夫なのでいいですが、必要以上の材料はコストアップにつながるので、やはり許容応力度計算を行い、その家の最大のコストパフォーマンスを発揮できた方が良いです。

丸庄建設では随分と前から耐震にこだわってきました。耐震等級3と言う話だけではなく、断面欠損の少ない金物工法の採用や、基礎コンクリートの一体打ち、構造計算など、木造在来工法でありながら弱点を克服し、大手特殊工法やSE工法などよりコストを抑えながらも計算根拠に基づいた強度確保で、現在の仕様はとてもコストバランスに優れています。

以前はスパン表を使用していましたが現在は許容応力度計算をしています。さらに言えば、少し前まで許容応力度計算は外部に委託していましたが、ついに社内で(私が)許容応力度計算ができるようになりました
そしてルート2と言われる計算まで行えますので、上下階の耐力壁のバランスまでも考慮しています。

ソフトを買えばできるものでもなく、知識と経験も必要なるため、誰でもできるものではありません。


意匠設計と構造設計

丸庄建設からご提案させて頂くプランでは、常に耐震等級3が付いて回るので、どうしても柱や壁が抜けなかったり、他の工務店に比べると開放的ではないかもしれません。これは意匠と構造が常に一体で考えられているからです。

普通は意匠設計と構造設計は別の人間が行うのが基本です。その方が効率がいいですし、専門特性が強くなるので、よりクオリティはあがります。意匠設計しかやったことない設計士は構造に関しては素人です。構造計算を行う人は少し意匠性に欠けたり・・私も以前は設計事務に努めていましたが、構造計算は外部委託でした。

しかしです、別の人間が行うからこそ間違うことや、意図しない事まで考慮されコストが上がってしまったり、さらには構造計算したらNGで意匠設計に変更が出るという事もありますし、意匠を変更しないために構造に負担をかけてコストが上がるという事もしばしばあります。


結局、コストも耐震性もデザインも大切。

丸庄建設ではこれが常に一体で考えられるので、正直に言えば他より意匠性が劣るかもしれません。しかしそれはコストを上げずに耐震性能を上げつつ、意匠性も考慮した結果でもあります。

意匠・構造・コスト、3つの要素のうち、例えばお金はかかっても大丈夫です、とか、耐震性考慮しなくてもOKです、という話になってくると、デザインもかなり凝った建物のご提案ができるのではと思います。私もデザイン事務所で修行してきた者として、腕が鳴りますが、耐震性がなくなるのは丸庄建設の家づくりからは少し脱線しますのでそう言ったご要望にはお答えできません。

どれを優先するかにおいても難しいところではありますが、耐震性について拘るのは弊社側であり、意匠性はお客様と弊社がそれぞれ拘り、コストはお客様が一番気にされる部分です。ですので丸庄建設とお客様の思いが一つになる事でハイコストパフォーマスな家ができると思います。


今日は久しぶりの更新にも関わらず、こんなに長文で小難しい話を描いてしましたが、少しでも他社の言う「耐震等級3相当」だから大丈夫というものがどれほどいい加減なものか、お伝え出来たかと思います。

まだまだ許容応力度計算の魅力が話しきれないですが、とにかく許容応力度計算をすると、今まで気にもしなかった問題点にいくつもぶつかります。なのでファーストプランのご提案も2週間以上考えないとその問題点がクリアできませんので、かなり頭を悩ませます。

それでもデザイン重視の工務店にお客さんが行ってしまう事は多いですが、そもそもそう言った工務店と比較されると正直辛いものがあります。全ては構造ありきですので、そこに力を入れていない工務店と比較される事自体が少し違うと思います。

工務店選びでも、その工務店はどこに力を入れていて、自分たちは何を求めているのか・・本当に耐震等級3は必要なのか?相当でもいいのか?そこさえはっきりすれば、選ぶべき工務店はかなり絞られるはずです。


終わりに。

こんな話も聞きました。耐震等級3の計算はするけど申請がめんどくさいので出しません。という工務店もあるようです。絶対計算してないだろ!と突っ込みたくなりました。そういう場合は計算書見せてくださいとあらかじめ言っておかないと危ないですね。計算書だけでも1000ページ以上はあるはずなので、ない場合は計算していないです。

耐震3の計算は甘くないですよ~。