今回のお家は、南に家が立ち並ぶ日当たりの悪さと大通りに30mほど面した立地での計画でしたが、計画当初は頭を悩ませました。

日当たりも見込めない、建物の顔も20mある、道路からの視線や動線も気になる。

この問題を解決する手段として縦格子のデザインとなっている中庭があるのですが、これがなければ成り立たないほど重要な役割を果たしていると思います。

初回のプレゼン時から大きな変更はありませんでした。中庭や窓のディテール、アプローチは個人的には大幅にイメージを上回ったと思います。そして、街路樹も建物とマッチして、街に溶け込みながらも圧倒的な存在感を放っています。

性能は言うまでもありませんね。

1階はほとんど日は入らないですが、中庭からの安定した北の天空光で薄暗くなりがちな水回りや廊下も明るく、むしろ高級旅館の坪庭のような雰囲気も感じられ、その奥にある寝室にも明るさと癒しをもたらします。

中庭は格子だけでは視線も少し感じるので、白ナンテンと常緑ヤマボウシで距離感を出しました。そして立水栓と雨樋からの水を処理するために砂利で水みちも。実際に水を流すと排水時に小川みたいに流れますので、雨の日も楽しみが増えます。

この家から庭をなくすことはできません。

私個人としては、この家に限らず、家と庭が常に一体であることが理想と思います。

とはいえ、どうしても予算的な問題で100%の状態にはできないことも多い外構工事。ここでよく登場するキーワードが「住みながらやります」「DIYします」「後で考えます」

後で考えるのは絶対NGです。

ではどうするか。

「理想の状態」だけは建物と一緒に考える。それを住みながらやるのか、建築時にやるのかは別として、とにかく家と庭を一緒に考える。
そうしないと、家の配置や庭の使い勝手も決まらないし、そもそも庭の必要性すら無くなってしまいます。

常緑樹で目隠しをするのか、落葉樹でパッシブの考えを取り入れるのか、庭が建物に与える影響(もっと言えば住む人への影響)がとても大きいと言うことを、間取りや性能と同じくらい大切に考えないといけません。

良い家づくりは、庭まで考えてこそ。
皆様の今後の家づくりの参考になれば。