久しぶりの更新です。ここまで空いたのは初めてかもしれません。
この数年間、想いを言語化する事に時間を費やしました。ようやく、形になりました。


家づくりを学び始め四半世紀、数えきれないほどの家を設計し、実際に携わらせていただきました。

近年の家づくりでは、デザインはもちろん、性能や耐久性にもこだわる傾向が強まっています。それと同時に、パンデミックをきっかけとした世界情勢の変化や、円安の進行、資材の高騰により住宅価格が著しく上昇しました。その影響で、坪数を抑えた家や窓を減らした総二階の家など、予算を削るための新しい住宅スタイルが増えています。

そんな中で、ふと、今の世の中の家づくりは、豊かな暮らし・豊かな社会を実現するために建てられているだろうか、と思うようになり、豊かとは何か、をしばしば考えるようになりました。人それぞれ答えが違うのは当然だと思います。

新しいブランドを構築するにあたり、日本全国のさまざまな企業のホームページを見て回りましたが、そこで語られる「豊かさ」に違和感を覚えることが多々ありました。「豊か」とは具体的にどのようなものを指すのか。それを発信する企業自身が言語化できていないケースも見受けられたのです。

私が思うに、これからの家づくりや暮らしを考えるうえで、豊かな暮らしを「因数分解」することがこれまで以上に重要だと思っています。

「豊か」とは、簡単に言えば自分が喜ぶ瞬間、自分がご機嫌になっていられる状態であると思います。ただそれは瞬間的な消費行動での喜びや、モノを所有する喜びとは異なります。

特に「家」という大きな枠組みで考えると、「この家でよかった」と言えるような喜びが継続的に訪れることこそ、豊かな暮らしと呼べるのではないでしょうか。

もちろん、家族がいる場合は、家族のイベントからも喜びを感じるでしょう。ただ、その喜びは賃貸や外出先でも得られるものであり、「家そのもの」から得られるものではないかもしれません。

「自分自身が豊か」である暮らしとは、一人の人間として、どういう瞬間に喜びを感じ、ご機嫌でいられるのかを日々の暮らしの中で再現し続けることだと考えます。

ただし、初めて家づくりを始める方にとって、この問いは少し難しいかもしれません。だからこそ、これまで丸庄建設で家を建ててくださった方々や、私自身の暮らし方を紐解き、その中で感じた喜びを具現化していくことが、豊かな暮らしをお伝えする最良の方法だと考えています。

「四季を纏う用即美の家」

それは例えば、毎日違った表情を見せる光と影を感じること、移ろう季節を感じること。暮らしの中に四季を纏うこと。それをゆったりと眺められる居場所や、そういった時間を大切にしたくなるしつらえ。
それは例えば、時間と共に味わいが増して愛着が増す素材を使うこと、暮らしに馴染む無駄のない間取りや収納計画といった用の美・機能美といった、器としても無駄な装飾がなくシンプルに美しい家。
そして、それらを支える確かな品質と住環境を実現する安全性と快適性、そんな暮らしをずっと続けられる耐久性や維持管理性。

ただ、これだけが「豊かな暮らし」のすべてではありません。初めて家づくりをする方には、ほかにもこだわりたいポイントがあるかもしれません。しかし、どんなに優れた設備やおしゃれなデザインも、時間とともに当たり前のものになり、価値を感じられなくなることもあります。

私が伝えたいことは、年月が経とうとも、そこから感じるものが必ずある、自分の心を落ち着かせられる空間や居場所がある、そんな家づくりこそが、感性や価値観を更新し続けられる、豊かな暮らしなのだということです。

現代の人は余裕ができた時間でSNSや動画視聴、ゲーム、ネットサーフィンといった画面を見ることに一生懸命です。今の暮らしは目を向ける先が”画面”以外に少ないのだと思います。そういった画面を見る生活が当たり前になればなるほど、知識や情報が溢れ頭では豊かさを理解しつつも、小さな幸せを積み重ねるという実体験が日常にないため、目の前の幸せのカタチを見過ごしてしまうのだと、この話はまさに数年前の自分のことでもあります。

私自身、結婚し家を建て、子育てをする中で、幸せよりも「大変だ」と思う瞬間のほうが多い時期がありました。

そんな中で始めた自宅の改修工事、庭づくり。終わってみれば、あぁこういう事だったのかと、真の豊かとはものすごく単純な事なのだと気が付いたのです。

それは”家族と幸せに暮らせていると自分が実感する”ためには、”自分自身が常に心穏やかでいる事”が大切で、さらには自分の機嫌の取り方が他人に依存しない方法であるか、それに尽きるのです。

それをいかに家という暮らしの基盤に当てはめて考えられるか―。


四季を身近に感じられる暮らしや、素材の良さを活かした家づくり、そして住み始めたお客様からいただく「暮らしが変わった」というたくさんのお声。

今まで想像もつかない暮らしを実際にされて、家を建てるまではしていなかった事に興味を持っていただく。その延長にもしかしたら食器をちょっといいものにしてみたり、調理器具も拘ってみたり、ハーブとか育てて料理に使ったり・・

そんなの絶対しないよ、と思えば何も始まらないけど、自分が喜ぶ瞬間を作れる環境が整っている事で、ちょっとだけ新しい自分に出会えて、成長していく。そうやって自分自身が豊かになれる暮らしが始まるのだと思います。

日々の暮らしに興味を持ち、より良い暮らしを目指すきっかけが、家づくりで生まれればいい。そう思っています。

「暮らす」を、最高の喜びに。

それは今この瞬間こそが幸せである、という事を意識することでもあります。そうやって暮らしに興味を持っていただくこと、そしてそれが実現するように皆様を支える事が丸庄建設の使命だと考えています。

その先に、暮らしの質が高まり、人生の質も高まっていくことに繋がれば、そこにはきっと笑顔があるはずです。そう生きるためのきっかけをつくりたい。

大げさかもしれませんが、そんなことを本気で思うのです。